徒然なるままに金曜日。

最近、夜な夜などこかから「あぅるぁぅぅぅ〜ん」という猫の鳴き声が聞こえる。初めはうちの飼い猫が家の中で鳴いているのかと思っていたが、先日の夕方、その子が私の側にいる時に「あぅるぁぅぅぅ〜ん」が聞こえてきた。外からだった。声の主は野良か放し飼いの子だったようだ。

すぐにベランダに出て、どこから声が聞こえるのかと耳を澄ましたけど、残念ながら隣家の敷地内の方から聞こえてくるようだった。

コートを着て庭に出て、畑に廻って塀の向こうの隣家を覗こうとしたら、見当を付けていた茂みから、黒いちいさな影がダッシュで走り去って行くのが見えた。たぶん黒猫だった。姿を見ることができて、一瞬嬉しさを感じたと同時に、隣家の自家用車が死角から現れて目の前を横切った。運転手の女性が私に気付き、驚いたという表情をしたので、慌てて会釈をした。私は自分の敷地内に居たのだから別に不審者ではないのだが、視線が塀を越えて隣家を向いていたのはまずかったと思う。変な人だと思われたかもしれない。

「怪しい者ではありません。ご存知、隣に住む者です。怪しまないで。ただ、猫が。猫がお宅の庭にいるんです。敷地に入らせてもらえませんか?猫を見たいんです」と去りゆく車の後ろ姿を見送りながら思ったくらい、気持ちと姿勢は前のめりだった。でも今日は運が向いてなかった。あの黒い子を近くで見たかった。

その後は、我が家の裏の道なんかを歩いて、どこかからあの子を見つけることができないか探してみたが、無理だったので帰ってお風呂に入ってごはんを食べてレンタルDVDを観て寝た。

「あぅるぁぅぅぅ〜ん」は今夜も聞こえてくる。できれば会いたいし、困っていそうなら何かしたい。うちの敷地内に来てほしいと思う。無理かな。